今は解散してしまった、国民的音楽グループSMAPの曲に「世界に一つだけの花」があります。歌詞もメロディーも親しみやすくて、幅広く愛されている歌です。
歌詞の一節に「ナンバーワンにならなくていい、もともと特別なオンリーワン」とあります。花に例えて、私たち一人一人を「オンリーワン」と励ましてくれているようですね。
ところで、この「もともと特別なオンリーワン」とは、励ます意味を持つかどうかは別にして真実です。この地球上に、私たちと同じ人間は一人として存在しません。私たちは生まれながらにして、オンリーワンを生きる運命にあるのです。モデルとなりそうな人の真似をし続けても、その人と同じ人生を生きることはできません。
そんな私たちがオンリーワンの人生を生きるために、日々おこなっているのが、投影と取入れです。
自分の気持ちを外に映し出すのが投影です。例えば夕方になると寂しい気持ちになりますが、これは寂しいという私たちが持っている感情が、夕方の情景によって引き出され映し出されるわけです。
人との間でも投影は、もちろん起こっています。相手を愛おしいと思うときは、自分の中にある愛情が引き出され、相手に投影されているのです。相手も同じ気持ちを投影してくれたら、同じ感情を共有できたことになり、幸せな一体感に満たされます。一方、ネガティブな感情を投影すると、相手が本当にネガティブな存在に感じられ、ますます不安を覚えたり怖くなることがあります。
取入れは、周囲の言葉や感情、考え方を取り入れ、自分の中で消化していくことです。体が食べ物を欲するのと一緒で、取入れは私たちが生きていくために欠かせないものです。取り入れたものは投影され、そこで起こったことがまた取り入れられます。孤独や孤立が危険なのは、この取入れができにくい情況になるからです。また心が傷ついた時、うつの時なども、この取入れる力が落ちてきます。
私たちの心は、こうやって日々の投影と取入れを続け、オンリーワンの自分を作って行きます。投影や取入れに支障があるとき、私たちオンリーワンの力は落ちてきます。私が日頃使っている表現では、「自分が減った」状態となります。この時こそ、オンリーワンの私たちに一人一人に寄り添った助けが必要です。
考えてみれば、オンリーワンを作っていくこの投影と取入れは、私たちの人間関係を作り、それが広がってこの社会ができているのです。SMAPの曲に共感するのも、オンリーワンを生きる私たちの心があればこそと言えます。