· 

雨過天青

 雨が降り続いた後の晴れ上がった青空は、今までの鬱々した気分を吹き飛ばしてくれます。お天気一つで、私たちの気分はすっかり変わりますね。

 

ところで、昔から作るのが難しい焼き物として知られているのが青磁です。色は黄、青、緑などの幅がありますが、追い求められたのは青い色です。

 

今から約900年前の中国の皇帝、徽宗が焼かせたのが、奇跡といわれる美しい青色の青磁です。この青色は、「雨過天青雲破処」という言葉を表現した色と言われています。

 

「雨過天青雲破処」とは、雨が上がり雲の間から見える青空です。降り続く雨がやんだ後、雲が破れて澄んだ青空が覗きます。雨が上がって行く時間の経過も、まだ湿り気を帯びた空気の中で澄んだ青空に出会う感動も感じさせてくれる言葉です。この青空の色を焼き物で表現せよという命令が、皇帝から発せられ、陶工たちは苦難の末それに応えたのです。

 

この言葉は現代でも生きています。科学の発達した現代でも、青磁は難しい焼き物です。うわぐすりの調合、かけ方、焼く温度など、微妙な違いで成否が決まり、なかなか思うような作品はできません。しかし「雨過天青雲破処」を目指して、現代に至るまで陶芸家達は青磁に挑んできました。

 

心が苦しい時、大勢の中にいても深い孤独を感じる時、それは暗い空のもと、いつまでも降り続く雨の中にいるような気分かも知れません。先の見えない不安を抱え、世界にたった一人取り残されたようです。この取り残された自分を見つけるためには、自分の心の世界を探索することが必要です。

 

心の世界は原始の森のようなものです。道案内ができ、一緒に探索してくれる人がいないと入るのが難しく、入ったとしても迷ってしまいます。もし案内人(カウンセラー)と協力して苦労しながら探索し続ければ、いつか「雲破処」に至るでしょう。厚い雲で覆われていた一角が破れ、青空が覗くように、見失っていた自分と出会えるのです。

 

「雨過天青雲破処」という言葉に導かれ、青磁を追い求めた陶芸家たちに、言葉の持つ力を教えられます。心の世界も、思い浮かんでくる言葉、それに答える案内人(カウンセラー)の言葉のやり取りが道を作っていくのです。その中で、自分を支えてくれる宝物のような言葉に出会うことも、きっとあるはずです。