「あの子を探して」は1999年の中国映画です。
貧しい村の小学校の代理の教員となった、13歳の少女ミンジ。子供たちの指導はできず、悪童のホエクーに困らされます。ところが、ホエクーは突然、病気の親のため町へ出稼ぎにやられます。生徒を減らさないよう言われているミンジは、何とか連れ戻したいのですが、町へ行くバス代もありません。生徒たちと知恵を出し合い、ようやく町へ出発します。苦労して町へ着きますが、ホエクーの行方は杳として分かりません。万策尽きて、町のテレビ局に行き、訴えます。ついにテレビに出演し、ホエクーに呼びかけ、再会を果たします。
まるでドキュメンタリーを見ているような映画です。13歳の代理教員ミンジは、最初は何もできず硬い表情です。ホエクーを探すため、生徒たちと話し合い、少し教師らしくなっていきます。町ではホームレスのような生活をしながら、ひたすらホエクーを探し続けます。テレビでホエクーに呼びかける時、ミンジは初めて感情を表し涙を流します。
13歳の少女が背負っている現実は、理不尽なものです。貧困、都会と農村の格差、子供も労働力にされる現実。
この映画では、大人たちが多少いい加減でも、子供達の声を聞いてくれます。大人たちも現実の中で葛藤していますが、子供達を抑えつけることはあまりありません。そこでミンジは大都会の中でホエクーを探し出すという、13歳の少女には不可能と思われる難題に取り組んだのです。大人たちが抑えつけていたら、ミンジは大人の意向に沿うように考え、自分の意志を無くしていたかも知れません。
ホエクーを探し出したミンジは、笑顔で子供達と向き合います。自分の力を信じ、生徒たちを愛おしく思う気持ちをもつことができるようになった教師の姿です。
心が成長するとはどういうことか、考えさせられる映画です。
自分の意志を持つこと、障害はいろいろありつつも、行動すること、当たり前ですが成長には絶対に必要なことです。先が見通せない行動には不安がつきまといます。外界の不安、心の不安と戦いながら行動を続けた結果、意志が実現する時、何とも言えない新たな感情が生まれます。そして感情が生まれる時、心からの言葉が生み出されるのです。
ミンジが涙を流して発した言葉は何だったのでしょう?ぜひ、映画を見てください。
カウンセリングの場でも、抑えつけられ見失った感情を、時間をかけて探していきます。
ミンジのように、あきらめずに。
その感情を探し出した時、自分だけの言葉が生まれ、心の成長が再び始まります。
自分の中にいる「あの子を探して」です。