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天岩戸は開いた!

 

 天岩戸神話は、私たちにはなじみ深い話です。

 

空の上の高天原に暮らす、太陽の神・天照大神(アマテラス)と弟のスサノオノ命。弟は暴れん坊で、田んぼの畔を壊したり、馬の皮を剥いで機屋に投げ入れたり、いたずらも度が過ぎていました。怒り悩んだ姉の天照大神は、天岩戸という洞窟に隠れてしまいます。太陽の神が隠れたので、世の中は真っ暗です。しかし、アマテラスはかたくなに岩戸から出て来ません。

 

困った神様たちは相談し、天岩戸の前である催しを始めました。女性の神様が面白おかしく踊って、周りははやし立てます。あまりに楽しそうなので、アマテラスは天岩戸をちょっと開けて外をのぞきました。なぜ騒いでいるか聞くと、ある神様が、アマテラスより美しく立派な神が見つかったからと言って、鏡にアマテラスを映して見せました。それが自分と気づかないアマテラスは、新しい神をもっとよく見ようと、さらに岩戸を開きます。その時、手力男(タヂカラヲ)命という力持ちの神様が一気に岩戸を開けました。

 

アマテラスは外に出て、世界は再び明るくなりました。スサノオも反省して出雲の国に行き、自分の力を世の役に立てました。

 

アマテラスは弟のいたずらに、怒りや無力感を覚えたのでしょう。天岩戸に引きこもってしまいます。アマテラスにどうやって出て来てもらうか、神様たちの考えた方法が面白いですね。鬱々しているアマテラスに同調するのではなく、賑やかに楽しんで気を引きます。そして代わりが見つかったと言ってアマテラスを焦らせますが、実は鏡に映ったアマテラス自身です。落ち込んだ気分をうまくそらせて、自分と向き合わせ(鏡に映す)、最後の決断(外に出る)を助けたのです。

 

アマテラスは弟の問題で落ち込むことを止め、世の中を照らすという本来の役割に戻りました。そうすると弟も自立し、自分の役割にめざめて行ったのです。

 

親子、夫婦、同胞など、距離の近い関係では、相手の問題が自分の問題に感じられやすいものです。共感は大切ですが、相手の問題を我がこととして悩んでいると、相手は問題意識が薄れ、同じことが繰り返されます。

 

この話では、度の過ぎたいたずらをしたのはスサノオなので、アマテラスではなくスサノオが悩まないといけなかったのです。アマテラスは天岩戸に逃げ込んでスサノオと距離を取り、このことに気づいたのではないでしょうか?しかし、いったん入った天岩戸を出て現実に戻るには不安があります。その時、アマテラスを待っていた神様たちが、万全の体制で天岩戸を開ける手伝いをしてくれたと言えます。

 

ともすれば深刻になりそうな問題を、おおらかに明るく解決していった神話と言えそうです。