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オリヒメの力

 

 分身ロボットオリヒメは、吉藤健太朗さんが主宰するオリィ研究所が開発したロボットです。身体が動かない人、不登校になった人など、孤独に陥り外に行けない人が、分身ロボットオリヒメを現場に置き、遠隔操作でその場の活動に参加します。カメラで状況を見て喋り、顔や手や体を動かすので、その場で活動しているのと変わらない体験ができます。仕事も可能で、オフィスのテレワークやカフェの店員の仕事などが試みられています。

 

吉藤さんは病弱のため、小学5年から中3まで不登校で引き籠っていました。その時味わった、言葉を失うほどの強い孤独体験がオリヒメ開発の原点になっているそうです。

 

人は自分の役割を得る中で、自分の存在を感じ認めることができます。物理的に社会に出れない人が、今のままの位置で役割を持ち社会参加できるのは画期的なことです。今の社会は、大多数の身体が動く人、動ける人に沿って作られてきました。どのような人の在り方にも対応できる社会を作ることが、これからの私たちの課題ですが、オリヒメはその課題を大きく前進させてくれました。

 

 

 

今度は心が動かなくなった時を考えてみましょう。大きな不安に襲われたり、自分を否定する気持ちが強くなった時、人は孤独感を抱え心が動かなくなります。この辛さから逃れるため、人は酒やギャンブルなどに逃避をすることもありますが、根本的な不安が消えることはありません。心の苦しみは身体の苦しみほど外に表れず、個人が抱え込んでしまうことも多いものです。本当は、この心の苦しみをもっと共有することが、互いの理解や助け合い、そして対立のない社会につながるのではないでしょうか?

 

さて、この孤独感・不安に寄り添ってくれるロボットがあればいかがでしょう。人が今まで味わったこの苦しみをすべてデータで持っていて、どんな苦しみにも共感してくれるロボット。決して責めたり評価したりせず、ひたすら寄り添ってくれるロボット。そんなロボットがあれば、傷ついた心が少しずつ癒されて、再び動き出せそうです。これってもしかしたら、ドラえもんの大人版かも知れませんね。夢物語のようですが、心の存在にもっともっと光を当てて研究していけば、いつか可能な夢ではないでしょうか。

 

オリヒメが身体が動かない人の分身ロボットなら、こちらは心が動かなくなった人を温めるロボットです。名前はとりあえず、オリヒメハートはいかがでしょう。