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ベルリンの壁

 

 1961年に突如出現し、1989年に崩壊したドイツ・ベルリンの壁。今年は壁の崩壊から、ちょうど30年の節目となります。

 

ベルリンの壁は、ソ連を中心とする共産主義陣営と、アメリカを中心とする自由主義陣営の間で起こった東西冷戦を象徴する存在でした。当時、壁の近くのカフェでは、東西のスパイ達が情報戦を繰り広げていたそうです。

 

冷戦というからには、一種の戦争状態が28年続いたわけで、ベトナムなど世界の他の地域で代理戦争が起こり、多くの犠牲が払われました。

 

冷戦の終結とともに壁も壊され、現在は残された1㎞余りの壁に様々な壁画が描かれて観光名所となっています。

 

その中でも、最も有名な絵が「ブレジネフとホーネッカーの熱いキス」でしょう。冷戦当時のソ連の最高権力者であるブレジネフ書記長と、同じく東ドイツのホーネッカー国家評議会議長とのキスが描かれています。実際に挨拶で二人がキスをする写真が残っているそうで、男同士の熱いキスは当時の東側の関係を象徴するとも言えます。

 

大迫力のこの絵ですが、よく見るとなかなか可愛くもあり、壁の前でキスをしながら写真を撮っているカップルもいます。

 

当時と違い現在は、性的マイノリティーの存在が認められ、男性同士の恋愛も当然とされる時代になりました。逆方向の流れもまだまだありますが、性の多様性を認める方向に時代は変わりつつあります。

 

この絵も、東西冷戦という深刻な歴史を象徴しつつ、男性同士の友情や愛情、そしてクスリとした笑いまで幅広い感情を投影することができるようです。東西分断の象徴というシンプルな存在だったベルリンの壁ですが、歴史を背負いつつ、今は多様な表現の場ともなっているようです。

 

私たちの心も余裕をなくすと、かくあるべきだ、白か黒かのどちらかしかないという分断的な状態になりがちです。こうなると、心はさらに余裕をなくし、行き詰まって行きます。かくあるべきという気持ちが自分を追い詰め、自分や他者に対する批判、攻撃となって行き、自分の心も人間関係も分断されていくのです。

 

白も黒も灰色もいろいろありという、互いを認める余裕を取り戻した時、私たちにやっと安心感と平和が訪れます。分断の時代と言われ、世界が余裕を無くしていきそうな現代、私たちの心もそれに呑み込まれないよう「いろいろあり」で行きたいものです。