「あなたがやりたいことは?」と聞かれて、皆さんはどう答えますか。
趣味に仕事に遊びにと、やりたいことが自然と口をついて出る人も多いでしょう。中には「うーん」と考え込む人もいるかも知れません。
特にうつ状態と言われる心の状態では、なかなかやりたいことは思い浮かびません。逆にやりたくないことなら、すぐ思い浮かびます。学校・仕事に行きたくない、誰とも会いたくない、生きること自体が辛いなど。
この気持ちを抱えて日々を生きるのは、とても辛いことです。学校へ行く・仕事をする・人と会うなどのことは、やるのが当たり前、むしろやらなければならないと自分でも思っていますから、辛い気持ちは誰にも言えず、自分を責めてさらに辛くなります。
この辛い日々から、どのようにすれば回復の兆しが見えて来るのでしょう。
今、コロナの最中、なかなか先が見通せず、不安ばかりが募ります。このような時は、まずコロナから解放されて自由に行動したいというのが、やりたいことになります。
同じように心が不安に満ちたうつ状態の時、その中でやりたいことはなかなか出てきません。まず不安やうつ気分から解放されたいというのが、一番の切実な欲求です。
両親の中が悪く家庭内がいつも不安だった、大きなトラウマを体験したなど、一度体験した不安は適切なケアをしない限り消えることはありません。いつもどこか不安で、その不安から逃れたいというのが無意識の優先事項になります。
ここで、不安やうつ気分から一時的に逃してくれる、酒やギャンブルなどに頼ることもあるでしょう。これは本当にやりたいこととは言えませんし、依存の危険性もありますが、とりあえず生きる延びるための手段となります。
このように強い不安を持つ人は、周囲も本人も心が弱いと思いがちですが、過去に味わった不安がまた不安を呼んで、不安が強くなっているものです。
この不安は時間をかけて、繰り返しケアすることが必要です。辛抱強くケアしていくと、ふと自分がやりたいことが思い浮かび、心が動き出す瞬間があります。今まで見失っていた自分がやっと現れたのです。
自分を否定ばかりしていた負の回路が、やりたいという正の回路に変わって行き、回復のエネルギーになって行きます。不安のために小さく無力になっていた自分が、やりたいことをやってエネルギーを蓄え、成長して行くための第一歩が始まったのです。