· 

善と悪

以前、人気を集めていた時代劇に「水戸黄門」や「桃太郎侍」などがありましたね。黄門様や桃太郎侍などの超人的・絶対的な力を持っている「善」が、弱いものをいじめ利権をむさぼる「悪」を懲らしめるというストーリーが毎回繰り返されました。とても分かりやすく、見てスカッとする効果がありましたね。

私達は、世の中はこんなに単純ではないと知りつつ、善が悪をやっつけて欲しいという願望を持っています。

これは私達の心の中とよく似ています。心の中にはたいがい、自分が認める良い自分と、認めたくない悪い(ダメな)自分が存在するものです。良い自分は、真面目で成績が良かったり、特技があったり、人に好かれたりする自分です。悪い(ダメな)自分は良い自分の奥にいて、実は自分に自信がなかったり怠惰だったりして、それが人にばれないようにびくびくしています。

良い自分が悪い(ダメな)自分を抑えて消してしまおうと、絶えず努力するのですが、いくら頑張ってもダメ悪な自分が消えません。

実は、心の中の善と悪は、正反対に見えて根は同じです。自分を否定する気持ちが強いと、それを何とか隠して良く見せようとする気持ちが強くなり、心の中が良い悪いで二分されてしまうのです。人の心には多かれ少なかれこのような分断がありますから、黄門様や桃太郎侍が悪者をやっつけてくれ分断が解消されるのを見ると、スカッと共感するのでしょう。

現実においてこの二つを統合するには、どうしたら良いでしょう。

それには、自分を否定せず、良いも悪いもありのままの自分を認めることが必要です。特に、人に認められようとして努力しても、なかなか結果が出ず、つい自分を否定してしまう自分に、大事に寄り添ってやりましょう。

 

子供時代、こうやって努力して親や周囲に認められたいと願っていた自分がいて、分かってもらえず孤独だったのではないでしょうか。人に認められたいという願望は、人とのつながりの第一歩で、大事にされるべき気持です。大事にされないと自分を否定し、ダメな自分、悪い自分という思いにつながってしまうのです。