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名前

「桜」はコブクロの有名な歌の一つです。その歌詞の中に「名もない花には名前をつけましょう、誰かの声でまた起き上がれるように」という一節があります。名前の持つ役割をよく表している歌詞だと思います。

名前は自分と他者を明確に分けてくれます。自分という存在を特定してくれるのです。この与えられた名前の中身を作っていくのが、私達の人生と言えるかも知れません。

名前をつけてくれた人がいて、その思いを託されると、その思いに添って自分を作って行こうと、方向性が定まるかも知れません。その思いが重すぎたり、自分と相容れず悩む場合もあるでしょう。

名前には、つけた人の愛情がこもっている場合が多いのですが、そうでないこともあります。例えば、記号のように、他者との分別のためにつけられる場合もあります。これは、単なる対象に過ぎず、愛情関係などが成立していない場合です。たくさんの動物を飼育している場合など、一号、二号など番号でつけたりします。

動物でなくても、人間の場合でも、愛情関係がないまま生を受けたり、親が不在だったりする場合があります。この場合、名前はあるものの、名前を通じて伝わる大事なものが乏しいのです。「誰かの声」がなかなか伝わって来ないのです。「誰かの声」がないと、名前だけで自分を作って行くことは、とても困難になります。

これは家族の問題に限らず、人間の作るあらゆる集団で言えることです。例えば学校や職場でも、「誰かの声」が名前を通して真っすぐに届くことが大事です。

 

「誰かの声」が届き、自分も「誰かの声」になれる柔軟な組織であれば、それぞれの名前がくっきりと表れ、生き生きした組織になるはずです。