ずい分前のブログで、中国映画「あの子をさがして」について書いたことがありました。「あの子をさがして」は1999年の映画なので、もう四半世紀も前の映画になりましたね。
内容は、13歳の少女で貧しい田舎の小学校の先生ミンジが、町に働きに出された悪童の教え子ホエクーを、大都会で探し出す物語です。生徒を減らさないように言われて、やむを得ず探しに行くのです。教師の勉強をしたわけでもなく、ただお金のために働いている無表情なミンジが、ホエクーを探すため苦労した末テレビで呼びかける時、涙を流し激しく感情を表します。お金のためと思っていたけど、実はホエクーの対する思い・愛情があり、それは13歳という子供なのに大人として働かないといけない自分にたいする悲しみや怒り、愛情でもあったと思います。この時のミンジに何とも心打たれます。
うつ状態になって来られる方には、うつになった自分を弱いと言って責めることがよくあります。自分の努力が足りないばかりにこうなったと、苦しんでいる自分をさらに責めるのです。
よく聞くと、この考え方は子供時代から続いていることが多いのです。子供時代から常に自分にダメ出しをし、現状を肯定することができず、いつも不安を抱えて生きて来たのでしょう。安心して子供でいることができず、ミンジのように大人のような考え方・行動をせざるを得なかったと思われます。
外から価値観を押し付けられ、それに合わせるのに精いっぱいだったとか、親が病気だったり依存的だったりで、自分が親代わりをしたりとか、その人その人事情は変わりますが、子供でいることが難しかったという事情は共通しています。
子供の持つ生き生きとした感情を抑えつけたまま生きて来ると、自分というものがよく分からず自信が持てないため、「かくあらねばならない」という強迫的な観念を自分に課してしまいがちです。これでは達成感がなく、いつも不安です。
このような状態で、何か壁にぶつかると、それをきっかけにかろうじて保っていた均衡が破れ、うつ状態に陥ることがあります。
一度歩みを止め、苦しい状況から距離を取ることが必要です。そして、自分の奥に隠れてしまった子供、「ねばならない」思考に圧し潰され、苦しんでいる子供を探してやりましょう。ミンジがホエクーを探し出した過程のように、時間も労力も諦めない気持ちも、そして協力者も必要ですが、隠れて見えなくなった子供が大人になった自分に探し出してもらうのを待っているのです。