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転移する感情

    ある人に対して、自分でもよく分からない感情が湧く。不安を伴う強烈な感情で、これを何とか解消しようと相手に働きかけても、相手は戸惑い、逃げて行くことも多い。このような感情は、転移感情の可能性があります。

幼少期に体験した、強い不安や恐怖、怒り、叶えられなかった愛着など。その時出せなくて抑えていた感情が、似たような雰囲気の人に遭って出て来るのです。例えば父親のような雰囲気、母親のような雰囲気などが、まず思い浮かびます。自分でも意識せず出て来るので、てっきり目の前の相手との問題と思ってしまいます。

いきなり湧いてくる強い感情に本人は翻弄され、相手を求めたり恨んだりして苦しみ、相手にも迷惑がられます。

実は過去に体験した不安や苦痛が解消できないまま、取りあえず蓋をして生きてきたのです。その蓋が、いきなり開いてしまったのですから大変です。蓋をして抑えていただけで、自分ではコントロールできなかった感情です。

不安や苦痛を伴うこの感情と向き合わない限り、いつまでも同じことが繰り返されます。いわば、その感情を抱えた子供が私達の中にいて、機会を見つけては泣き叫んでいるような状態です。

泣き叫ぶ子供には、向き合って安心させてやることがまず必要です。一緒に向き合ってくれる専門家や仲間を探し、何度も何度も繰り返し安心させてやりましょう。抑えていた感情が落ち着いてくると、転移感情に苦しむことが減り、現実感が出て来ます。

 

転移は苦しい現象ですが、生き辛かった自分と向き合うための、絶好の機会がやって来たとも言えます。