私達の心の中には、多かれ少なかれ後悔している出来事が存在します。それは、「あの時ああ言えば良かった」、逆に「言わなければ良かった」と、その時の言葉にまつわる後悔が多いものです。親しい家族との場面、友人や恋人との場面、上司との場面など、一回限りの劇のシーンのような記憶です。
特に意識せず、ただ何となく言う時もあれば、言葉を慎重に選んで言う時もあるでしょう。
どうやったら相手に受け容れられるか、そればかり考えて自分の気持ちを抑えると、上手くいけばいいのですが、たいてい後悔が残ります。そこで、気持ちを言えなかった自分を責めたり、「なぜ分かってくれないのか」と相手を恨んだりと、悶々とします。しかし時間を巻き戻すことはできず、この気持ちを心の中に抱えて行くことになるのです。
いつも自分の気持ちを抑えて相手を優先させる癖がついている人は、自動的に自分を抑えます。自分の気持ちを分かってもらえない環境にいるとこうなりやすく、自分の気持ちを抑えて相手が喜ぶことが自分の喜びとなるのです。
喜ぶかどうかは相手次第なので、自分の本当の喜びや安心感にはなりません。一時的にはうれしい感情が湧きますが、どこか虚しく、時には後悔や恨み、自責感が残ります。
このような自分に悩むうちに、言えなかった言葉を強く意識するようになることがあります。時間を戻して、もう一度その場面になれば、こう言いたいと思うようになるのです。言えなかった言葉は、いつまでも心の中で出番を待っているのです。
言えなかった言葉を、時間を戻して言うことはできませんが、今から先、「言えなかった言葉」がないように、変えて行くことはできます。
それには、すぐに相手や周囲に合わせず、自分の方を向いて、自分と向き合ってから言うことです。今まで抑えるばかりで、本当につき合ってなかった自分とつき合うのです。つき合い方は、他の人との関係と同じで、まず自分を認めて、精一杯生きている自分を誉めることが大事です。
自分を認める気持ちが高まれば、言葉はついてきます。「言えなかった言葉」よ、これからはさようならです。