拭っても拭っても消えない不安、これを抱えて生きて行くのは本当に大変です。もはや、自分ではコントロールできない不安に振り回され、考えや行動が決まって行く人もいます。
たとえば、親にちゃんと養育してもらえず、それに代わる存在もなかった場合、いつも自分の存在に不安を持っているかも知れません。結婚して子供が産まれても、子供が自分に反発したり違う意見を言ったりすると、それが子供の離反のように思えて、再び見捨てられる不安がよみがえります。その不安が顔に現れ、不機嫌になります。
子供は大事な親の機嫌に左右され、いつも親の顔色を見て合わせるようになります。こうして、不安は子供に伝播し、子供は人の不機嫌を怖れるようになります。判断の基準になるのは、考え方ではなく感情(不安)です。
しかし、相手が合わせてくれても、相手に合わせ続けても、一時的な安心感があるのみで、不安が減ることはありません。愛情不足の状態に置かれた結果の不安ですから、その不安と辛抱強く向き合ってやらないといけないのです。見捨てられた気持ち、孤独感、寂しさ、怒り。その不安な気持ちを受け止め、一緒に歩んで愛情を育てることが必要です。
世の中にはいろいろな保険がありますが、愛情対象を失ったり、得られなかった時の保険もあって良いのではないかと思います。どのようなケアが必要かを判断して、必要なスタッフや環境を用意する制度です。
事故や病気で身体の一部を失うのも大きな喪失で、心身のケア・リハビリが必要ですが、愛情対象を失ったり得られないという辛い喪失も、心のケア・リハビリが必要なのです。