共有された不安

私達が乳幼児の時、最も長い時間を共に過ごすのは母親です。24時間一緒と言ってもいいでしょう。この関係は、胎内から始まります。

一心同体のようなこの関係では、母親の持つ感情は子供に、子供の持つ感情は母親に伝わり共有されます。子供が泣くと母親は不安になり、子供が何を訴えているのかと懸命に探ります。逆に母親がマイナス感情を抱えて不機嫌だと、子供に不安を呼び起こします。

ここで母親がもともと不安を抱えていたらどうでしょう。母親が愛された経験が乏しく、子供と向き合うことに不安を抱えている場合や、母親が子供の父親である夫と仲が悪く、夫に対する怒りや不安を抱いている場合など、母親の抱える不安は行動や言葉となって常に子供に伝わります。一心同体のような関係の中では、愛情も不安もそのまま子供に伝わるのです。

不安を感じ取った子供は、自分も不安になります。言葉を覚える頃には、母親の不安を無くそうと、母親に同調したり、欲求を我慢したりします。不安を共有し、自分の問題とするのです。一心同体であるべき母親の不安なので、母親から不安が消えない限り自分の問題として共有し続けます。

守ってくれるべき母親から不安をもらい続けると、子供は生きて行くための安心感が損なわれます。損なわれた安心感を補おうと、周囲を和ませる役割を演じたり、良い子になろうと自分に我慢や努力を課す場合もあります。いずれにせよ、どこか自分に自信を持てず不安です。

この不安は母親のものなので、子供はいつまでも解決しない不安に苦しめられることになります。安心感と愛情をもらうはずだった相手からもらった不安なので、手放すのも簡単ではありません。

 

自分を安心して語れる場、ありのままを認めてもらえる場があれば、徐々に安心感が得られます。このような安心感を増やす努力は、自分のものではない不安を手放すことにつながります。