母子分離

私達の社会では、子供は教育を受ける権利と義務を持ち、6歳になれば学校に通います。学校で社会生活に必要な知識や礼儀を身に着け、何をして生きるか考えます。こうして、社会の一員となり、自分の人生を作って行きます。

これは社会一般論ですが、個人にフォーカスすると、どうでしょう。

両親のもとに生まれた子供は、その家庭の事情や価値観などを抱える家族集団の中で成長します。社会の価値観と重なる部分があるものの、家庭独特の価値観もあり、社会とのギャップに苦しむ場合もあります。

さらにフォーカスすると、生を受け、密着した時期を過ごす母親との世界があります。母乳やミルクを飲み、抱いて守られた世界は母子一体の世界です。母親が子供を自然に受け容れていると、安心感・一体感が形成されます。

母親の中に不安感が存在すると、この不安感という異物に子供は不安になり、何とかそれを和らげようとします。不安な母親の機嫌をうかがい、機嫌を悪くしないような行動をとるようになります。コントロールできない母親の機嫌に対し、いつも不安を持っているのです。

これが続くと、成長後も周囲の事情に敏感で、自分より周囲本位になりがちです。つまり、精神的に母子分離が十分できないまま、生きていることになります。

せっかく学校で、自分らしい人生を送るための教育を受けたのに、母親から引き継いだ不安が、生きる指針となっているのです。そのため、何をしても達成感が持てなかったり、周囲の評価ばかり気になったりして、自分で自分を認めることが出来ません。

母親に強い不安がある場合、父親がそれを和らげるため介入できれば良いのですが、父親がそれを避けると、母親と子供が不安を共有する世界ができてしまいます。

いつも周囲が気になり、不安で自信が持てず悩む場合、原家族の中での自分を振り返って見ましょう。「親のせいで」と考えるのではなく、子供の頃どのような状況にいたかと考えてみるのです。母親との関係の中で、やむを得ず不安を引き継いだことに気づいたら、本当は引き継がなくても良いものだと分かって来るでしょう。

 

引き継がないと決めて行くことが、本当の母子分離になり、自分の人生を生きることにつながります。