アンパンマン

「アンパンマン」はやなせたかしさんが絵本に描き、1988年からテレビアニメとして、放送されている物語です。

弱いものを助け、悪をくじくだけでなく、お腹がすいた人には自分の顔(アンパン)を食べさせます。

ユニークなキャラクターがたくさん登場しますが、敵役のバイキンマンは、アンパンマンにライバル心を燃やし、アンパンマンの邪魔をしたいだけという、とても分かりやすい存在です。

主題歌の「アンパンマンのマーチ」には、驚かされます。

冒頭「そうだ うれしいんだ 生きるよろこび たとえ胸の傷がいたんでも」という歌詞から始まります。そして「なんのために生まれて なにをして生きるのか こたえられないなんて そんなのはいやだ!」と続きます。

胸の傷とは何でしょう?やなせさんは、戦争で弟さんを亡くしたそうです。

私達も大切な存在を失くしたり、自分自身への信頼感を失くしたり、辛い喪失や傷つきを体験することがあります。その喪失や傷つきは簡単に回復するものではなく、それを抱えて生きるしかないのです。子供にはまだ分からないかもしれない、人生の辛い真実です。

それでも「なんのために生まれて なにをして生きるのか」という問いに、こたえるために生きるのが人生だと、歌詞は続きます。この問いに、アンパンマンは、愛と勇気でみんなを助けるという答えを出したのです。

辛い喪失や傷つきを体験すると、自分を守るだけで精一杯になります。そんな時、自分を受け容れてくれる場所があったり、アンパンマンが自分の頭を食べさせるように、深く献身的に共感してくれる人がいると痛みは少し和らぐでしょう。そして、痛みを抱えながらも、誰かに共感したり助けることができた時、そのような自分への信頼感が少しずつ回復します。人を助けることは自分を助けるのです。

アンパンマンのマーチの歌で、子供も大人も人生の真実に触れ、小さな衝撃を覚えます。でも、アンパンマンのアニメは、分かりやすく楽しいのです。