普通、出生とは母と子が身二つに分かれることを言います。それまで一人の身体だったのが、二つに分かれます。
この時、新たな命と母親の間をつないでいたへその緒が切れたとしても、目に見えない多くの紐帯で二人はつながっています。命を守り育てる母親の欲求、喜び、愛情、そして保護と世話と愛情を求める子供の欲求。
同じく目に見えない紐帯でつながる父親と、周囲の支えがあります。このような紐帯や支えが、子供を守り育てる環境となり、子供は時間をかけて成長していきます。
この紐帯が不安に満ちたものの場合があります。身近な母親や父親が大きな不安を抱え、常に不安を周囲に投影している場合、子供は自分の感情を抑えて投影された親の不安に対処しないといけなくなります。子供はいつも緊張し、自分の欲求よりこの不安への対処を優先させ、親の不安を宥めたり安心させるため「良い子」でいようとします。
子供は安心感のある環境で伸び伸びと自分の感情を表現し成長するので、不安な環境では心が成長できません。自分の感情を表現せず抑えていると、自分という感覚が薄れ、生きる意欲も乏しくなります。周囲に合わせることはできても、心は空虚なのです。
このように、親の不安に取り込まれている間は、本当の出生・誕生をしたと言えない状態です。親の不安は親の不安であって、自分は自分の感情や欲求を持っていることに気づくのが第二の誕生、本当の誕生と言えます。
この第二の誕生は、物理的に家族から離れてみたり、他者に自分の物語を聞いてもらううちに、自分の感情に気づいて始まることがあります。第二の誕生には、自由と助けを求める気持ち、行動が必要なのです。